新たなる活動

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 ユートピアのドラムフレーズを頭の中で組み立てて行く。フレーズがしっかりと出来あがったら、スタジオを抑えてしっかりと練習をしておこう。三人が集まって出来る練習は、月に一回あるかないかのレベルだ。三人が集まる時は、各々のフレーズはしっかりと出来あがっていないといけない。次に集まる時は、合わせられる状態でなければいけないのだ。  そんな想いを巡らせていたら、留依から連絡が入る。  『勢いがつくと止まらなくてさ~。もう一曲出来たから送るね』  『ユートピアの方、まだ出来あがっていないぞ』  『俺なんか、まだ曲の全体すらつかめていない』  俺と丈二で抗議のような返信をする。 『大丈夫!皆、優秀だから(笑)。よろしくね~』  聞く耳は持たないようだ。強引に音源と歌詞が送られてきた。  『やるしかないみたいだな。』  『まっ、出来る範囲で頑張るか』  俺と丈二で『仕方ない。やるか』と言った感じの返信をする。  二曲目の音源を聞いてみる。これも疾走感に溢れる曲だ。リズムもかなり速めだ。途中でリズムチェンジがあるが、全体的には重量感と疾走感に満ちている。  曲調は哀愁感が漂っていて、全体は暗い感じだ。音の響きに、なんとなく不気味さを感じる部分もある。  歌詞に目を通して見る。 1ミリ先 作詞・作曲 瞳 留依 月夜を背景に 砂浜で踊るわ 舞い散る細かい砂を 身体に纏わせて 複雑怪奇なステップ 一心不乱の舞い 湿った風が吹き 傀儡の罠に落ちる ときめいた 心は いつか 傷を負う事で 安らぎを学び 目の前を 踊る 幻影の 罪を問う 歪の証 優しさで 受け止めてよ 切り刻んだ 背中の羽を 手を伸ばせば 届きそうだけど 1ミリ先を 触れない 指先 照りつける日差しを 手の平で受け止め 流れる細かい汗を 嗅覚で感じ取る 失われたバランス ちぐはぐな舞い 湿った風が吹き 傀儡の罠に落ちる 張り裂けた 心は いつか 血を流すことで 落ち着きを学び 目の前を 踊る 幻影の 罰を問う 歪みの証 冷たさで 受け止めてよ 突き放した 心の疼きを 心開けば 受け入れそうだけど 1ミリ先を 進めない 爪先 優しさで 受け止めてよ 切り刻んだ 背中の羽を 手を伸ばせば 届きそうだけど 1ミリ先を 触れない 指先 悔しさで 受け止めてよ 忘れ去った 記憶の爪痕 時は過ぎ 消えそうだけど 1ミリ先が 見えない 世界  相変わらず理解に苦しむ歌詞だ。難し過ぎないか。傷付いた心が、暗中模索の中、先に進むことが出来ないもどかしさに苦悩する姿を表現したのだろうか。出来れば、歌詞の世界観もドラムフレーズに反映をさせたい。  楽曲の世界観を決める要になってくる。これで、課題曲は二曲になった。次の練習までには、時間がある。とにかく、この二曲のドラムフレーズを作り上げることだ。二人に迷惑をかける訳にはいかない。
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