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暗闇を切り裂くかのように、一本のピンスポットライトの光がステージを照らす。
女性の司会者が照らされ、観客席が一気に盛り上がる。
司会者からのイベントの内容の説明が始まり、観客席から歓喜の声が響く。まるで、奇跡の瞬間にでも出会えたかのような喜びの声だ。
司会者からの説明も終わり、俺達、敗北者の説明が始まる。説明が終わり、スタッフから合図が入る。
俺達は目を合わせ、スティックでカウントを入れる。
爆音の炸裂と同時に、ステージが一気に明るくなる。
観客の歓声が響く。
一曲目はユートピアだ。
疾走感のあるリズムと圧倒的なパワーで押し切る。
スピーディーで重量感のあるリズムに、ギターとベースの硬くて激しくも細かい刻みによる旋律が、大蛇のように絡みついてきた。
演奏が一体化した瞬間を、身体に感じる。
留依の声が、鋭いナイフのような歌で切り込んできた。
俺達が放つ爆音の躍動は、一気に会場を制圧していく。
丈二の動きが演奏の決めに合わせて、激しくなる。留依の声の鋭さが増していく。
間奏に入り、二人がステージの上で暴れ出す。
丈二のライトハンドを駆使した、ギターソロの美しくも残酷な響きが、客席を圧巻していく。
留依のガチガチとした、歪の効いた硬い重低音の旋律が、会場を揺るがすかのように身体の奥底にまで重く響いてきた。
ステージの上で織りなされるは、暴虐的な世界観の様式美。
叩きだすリズムもより攻撃的なものになり、爆音は暴徒と化していく。
鼓舞された爆音の躍動は、ブレーキを破壊され、果てる事のない疾走を続ける。
リズムに合わせて、照明の色も目まぐるしく変化していき、赤、青、黄色の三色が細かく、ステージに散りばめられていく。
スポットライトが、縦横無尽に激しく動く二人を、忙しく追いかける。
再び、留依の切れ味抜群の声が響く。
丈二の重苦しくも、細かく刻まれるバッキング。
ツインペダルの連打を容赦なく蹴り込む。スティックを熱き疾走に任せて振り落とす。打ち出される音は、地響きをも圧倒する感覚だ。
客席に放たれるは、圧倒的な音圧。
最後は激しく其々が音を掻き鳴らし、音の洪水を作り上げながら、ハイハットを叩き、カウントを入れて、二曲目の一ミリ先の演奏に入る。
丈二が不気味な音色で、怪しい雰囲気を作り出す中、俺はスピード感と重量感を持たせつつ、切れを重視したリズムを叩きだす。
留依の歪みの効いたベース音が、より不気味で耽美的な世界観を作り上げて行く。
留依の歌は更に鋭さを増し、カミソリのような切れ味で、不気味でありながら暴虐的な音の中に違和感なく入り込んでくる。
途中でリズムチェンジがあり、スローになるが、激しさと重量感だけは、失わないようにする。
敗北者のオリジナル曲は、全て激しさに満ち溢れているのだ。
どんな雰囲気になろうと、激しさこそが、留依の作る曲の一つのテーマなのだろう。
客席に降り注ぐは、俺達の熱い情熱の籠った爆音の雨だ。
汗が飛び散る中、音一つ一つに感情が芽生え、お客の心の琴線を震わす事が出来るよう、全力でスティックを振い、ペダルを蹴りまくる。
全ては、俺達が作り上げる音のうねりの中で起こることだ。
俺と留依が創り出す激しいリズムの支柱に、丈二のテクニカルなギターフレーズが嫌らしくも美しく絡みついてくる。
俺達は果てる事のない疾走を続けるのだ。
この勢いは決して力尽きる事は無い。
楽曲は終了するまで、熱過ぎる激走を続けるのだ!
最後は、ドラムの乱れ打ちを軸にして、音の暴風雨を客席に叩きつける。
行きつく先を失った感情の炎で、全てを燃やし尽くすかのように。
丈二と留依が力任せに跳びはねる。
着地のタイミングに合わせて、左右のクラッシュシンバルにスティックを叩きつけると同時に、ペダルを思いっきり蹴り込む一発の音により、俺達の演奏は終了した。
観客席からの熱い拍手と歓声が心の中にまで響いてくる。
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