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俺達の演奏は終わった。出し尽くした感を、身体を流れ続ける汗が、俺自身に伝えてくる。身体に籠っている熱が、僅か数分間の燃え続けた演奏の激しさを物語る。
俺達が放ち続けたエネルギーは、観客達に伝わったのだろうか。
控室で寛ぎながら、野地さんのフォログラムとコンピューターサウンドによるライブを見ていた。
四人のアニメに出てくるような格好いいメンバーが、ロックバンドのライブを見事にステージ上に再現していた。
「指の抑える場所と出音がしっかりと一致しているな。良く此処まで作り込んだ物だ」
「ドラムの動きも音としっかり合ってるよ」
「ベースもね。しかもボーカルの口の動きまで一致している。本当に凄いね~」
俺達は控室のモニターを通して、コンピューターサウンドのライブを楽しんでいた。
あの時は驚く一方だった。
コンピューターサウンドの内容を理解しようとせずに、ただ否定するだけで、遠ざかっていたのも要因の一つだろう。
コンピューターサウンドの正体もある程度分かったし、フォログラムの映像にも慣れてきた。
内容が分かり、慣れが出てくれば、余裕も生まれてくる。
今は、楽しみながら聞くことが出来るのだ。
対戦相手の演奏を楽しむ……。
やる気を問われそうだが、音楽の価値って、勝ち負けで計れるものじゃないだろう。
芸術部門の審査の基準は、好みにかなり左右されがちだ。
今日のライブハウスのお客さんの好みは、どんなジャンルの音楽なんだろうな……。
そんな事を考えていたら、コンピューターサウンドの演奏が終了した。
スタッフの声がかかる。
俺達は再び、ステージに戻った……。
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