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今回はお客さんによる審査の状況も放映される。俺達は審査その物を、ステージに設置された大きなテレビ画面のような物で、直接確認することになる。
お客さんには、ゴムボールのような物が配られ、出口に設置してある、バンド名の書かれた箱にボールを入れる方法だ。
数字が画面に表示されるようにはなっているが、画面のお客さんの動向を見ていれば、数は確認できる。
お客さん達は、帰り際にボールを次々と箱の中に入れて行く。
観客の数は五十二名、先に二十七に到達した方が勝利となる。十対十五、コンピューター側が優勢だ。
十五対十七、十七対十八、差が詰まってきた。
十九対二十
二十二対二十一
逆転した。
二十四対二十三
一ポイント差をキープ!
二十五対二十四
このまま逃げ切れ!
二十五対二十五
追いつかれた。
二十五対二十六
抜かれた!
ドローでも構わない!
二十五対二十七
負けた……。
数字が判断する勝負の結果としては負けた……。
しかし、以前のような重苦しい物が、心に圧し掛かってくるような感じはなかった。俺達には失う物がないからだ。
それに、これで敗北者は終わりではない。このバンドはこれからも、楽しく音楽と向き合い続ける。
「全てを出し尽くした感はありましたが、残念な結果となりました。敗北者に投票してくれた皆さん、ありがとうごました。これからも日々、精進していきますので、熱い応援、よろしくお願いしまーす!」
留依の挨拶は、さっぱりとした内容で終わった。
「今回の企画を快諾してくれた、敗北者の皆さんとライブハウスのスタッフとお客様に深く感謝をいたします。前回と違い、個の対決では無く、バンドとしての対決に僅差ではありましたが、無事、勝利を収める事ができました。これからも、我々スタッフ、一丸となって、知識と感性を総動員して、頑張っていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします」
野地さんの勝利者インタビューも終わり、イベントは終了した。
俺達は控室を片付けて、帰路につくことにした。
明日は普通に仕事だからな。
仕事あってのバンドライフだ。
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