私、清宮華音(きよみやかのん)です。

5/9
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 僕の隣で、少女がごくりと息を飲む。同時に少女の緊張した息遣いも伝わってくる。陽翔と触れ合うばかりの距離に少女の体があった。  陽翔がいる河岸が蛇行する川の流れの外側にあるためか、箱が物凄い速さで川岸に迫ってくる。  (今がチャンス)  陽翔は勢いよく石を放り投げた。  石は雨粒をはねのけながら過ぎ去ろうとする段ボールの中にすとんと落ちる。同時に結び付けていた木切れが段ボールの端に引っかかった。  「やった……」と隣で少女の声がする。  陽翔は、慎重に段ボールを引き寄せようとするが、川の流れもさるもの。陽翔の力に対抗するかのように段ボールを下流に向かって持っていこうとする。  ビニル紐は空中でピンと張りつめた。段ボールの中では白い子犬が震える声で鳴いている。  「私、引っ張るから、あなたは段ボールを捕まえて!」  少女が真剣な声で叫んだ。  「分かった!」 .
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!