こいでも、恋でも

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「だからいつもこうやって神頼み―――じゃなくて、仏頼みしてるんだけど……」  ……えっ?  ということは、しょっちゅうここにきてるってこと?……ということは、あたしと同じように、縁を結びたい人がいるってこと?  そんなこっちの思考を遮るように、 「でも、未だに成就しそうな気配はないんだけどな」  先輩はあたしに渡そうとしていた百円玉をぽんと賽銭箱へ放り、手を合わせた。  それが……あたしの今の告白に対する、答えなんですか……?  だとするなら、どう捉えればいいんです?  「成就する気配はないけど、一途に想ってるから俺は頑張る」なのか、  「成就する気配がないから、俺の気持ち、今後どうなるかわからないんだよな」なのか。  もちろんあたしとしては、後者に賭けたい!  先輩が拝んでいる間、頭の中を光回線並みの速度で駆けめぐったのは、もちろん、彼の想う相手が誰であるかということだ。  まず、サークル内の女子連中の顔が頭に浮かぶ―――。  先輩同輩合わせ、めぼしいメンバーは二、三人というところだ。  ついで大学中の女子に移る―――。  しかしこうなってくると人数がはるかに膨れあがり、途端に検索が難儀になってくる。しかも、二〇年以上生きている先輩の交友関係が大学内に限られたものでないのは当然なわけで、外部女の可能性も捨てるわけにはいかない。  こう考えると、捜索範囲は広大極まりない。  でも、もちろん誰であろうと、あたしにあきらめる気持ちは毛頭ない! あたしの先輩に対する想いは、そんな中途半端なものではない! 中途半端であれば、ママチャリで新宿からここまでやってきやしない!  しかし、相手が誰であるか知りたい気持ちは大きい。これは興味というよりも対策のためだ。先輩を奪うにしても、敵がどういう女なのか知っているのといないのとでは、作戦の立て方が違ってくるから。……まあ、どんな相手でも負ける気はしないけど。  結局、相手を知る確実な方法はただ一つ。……至極何気なく、本人に尋ねること。  だから、 「誰なんですぅ? 先輩が縁を結びたい人ってぇ」  そっぽを向いていった。  こうサラッと訊けば、相手もスルッと答えやすい……はず。  それに、告白したあたしには訊く権利がある……はず。
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