一話 ヤンキー君は王子様な超国民的人気アイドル!?

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*  夢を見た。誰かが泣いていて、あたしが誰かに何かを言う夢。  小さなころの夢だったように思えるけれど、起きた頃には全く内容が思い出せなかった。 「はあ……昨日は疲れたなあ」  思わず独り言をつぶやきながら伸びをする。  なんていうか、濃い一日だった。  白銀についていろいろなことを知りすぎた気がする。 「とりあえず、学校行こう……」  そう言いながらあたしはネグリジェからゴスロリに着替える。  ボンヤリとしていると白銀の素顔が頭にちらつく。  慌てて首を振り、考えないようにしようとする、のに。 (何で、消えてくれないの! あの無駄にきれいな顔!)  ああもう。まどろっこしいなあ。  イライラしながら視線動かすと、雑誌の表紙の白銀が微笑んでいてとっさに雑誌を投げた。 「芽以ちゃん?」 「なんでもないよ、おばあちゃんっ。朝ご飯作るねっ」 「熱でもあるのかい? 顔が真っ赤だよ?」 「ないない! 全然大丈夫だから」 「無理しないでね、芽以ちゃん」 「大丈夫!」  早口でまくしたてながらあたしは台所へ立った。  なぜか何度も指を切りかけたのは、きっと疲れてるからに違いない。
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