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「申し上げられないって・・・彼女・・・何かに巻き込まれてるんじゃないですよね・・・」
「・・・・・・」
仮面男は、何かを言いたげに右手で額を押さえる。
「・・・あなたは彼女との面識がありますか?」
「・・・・いや・・・ちゃんと話したことは・・・ないけど・・・」
「では、気になっておられるのですか?」
「・・・分からない・・・」
一瞬興奮した血液が少しずつ下がっていく。
「・・・知りたいですか?彼女のことを」
「・・・どちらかと言うと・・・」
曖昧な返事を重ね、自分自身もどうしたらよいか分からず俯いた。
「もしどうしても知りたいのでしたら どうぞ」
顔を上げると、男の手が何かを差し出していた。
水色の小さなベルトのようなものだった。
「これはレンタル品ですので、お売りすることはできません。ですがもし あなたがもし彼女のことを知りたいのでしたら、この首輪を首につけて目を瞑って下さい。あなたの知りたい真実に、連れて行ってくれるでしょう。」
なんだか回りくどい言い方だ・・・要するに、これをつければ彼女の居場所が分かるということだろうか・・・でもこんな怪しげなもの、そう安々と受け取ることは・・・
「もちろん貴方様のご安全は保証いたします。もしご納得いただけないようでしたら、ご使用にならなくても結構です。明日 受け取りに参りますので。」
「・・・これつけると・・・どうなるんですか・・・?」
「それはご使用いただいてからのお楽しみです。ただし、ご使用の前に1つ忠告を。」
「・・・な・・・何ですか・・・」
固唾を飲む俺に、男は仮面をズイッと向けてきた。
「どんな真実を知ったとしても それはお客様ご自身のご負担になります。それだけご了承下さい。」
・・・どんな真実・・・?
仮面男の言葉に違和感を感じながら、俺は首輪を受け取った。
「では どうぞご堪能下さい♪」
男は軽い足取りでヴィーナスの影に消えた。
後を追いかけるが、すでに男の姿は無く、手には首輪が握られている。
「・・・やっぱり夢じゃない・・・」
自室で俺は、首輪をつけるかどうか迷った。
あの男は、こちらの世界とは違った雰囲気を醸し出していた。
これをつけることで、自分に何か恐ろしいことが起こるかもしれない。でも・・・彼女にもう一度逢いたい・・・このままでは彼女を永遠に失ってしまいそうな気がした。
『どんな真実を知ったとしても それはお客様ご自身のご負担になります。』
男の忠告が蘇る。
「・・・どんな真実があっても・・・」
俺は震える手で、首輪を巻きつけ目を瞑った。
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