優しい土曜日

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優しい土曜日

土曜日の昼過ぎ 教室には君と僕だけが居た 眩しすぎる日差しが逆光となり 君の顔がよく見えない 多分笑顔だと思うのだ さっきまで、二人で他愛ない話をし 声を出して笑っていたのだから 君が時代遅れだと嫌うセーラー服の 紺の襟が君の顔をより暗く隠す 白い身頃ですら煤けた色をしている 表情次第で話しかけ方を選ぶつもりが 逆光は僕に選択肢すら呉れないのだ 真顔で伝えるべきか 笑顔で茶化しながら話すか それとも今日は止めようか 僅かな躊躇いの時間が 君を身動ぎさせた どうしたのかと聞かれても まだ選択に悩む僕には 応えることが出来ない 泣かせたい訳はなく だからと言って、泣かせない訳もなく 有り得ない結果を求め 視線を彷徨わせる 僕達はやはり今日 「終わりにしよう」 「もう、終わりにしよう」 今日別れれば 君は明日一日を 泣いて過ごすことが出来るから
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