上司の懐と部下の財布

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上司の懐と部下の財布

上司と営業に出ると 昼飯は上司のおごりに成る 毎回食わせて貰うのもなんだし 財布を出しはするんだが 小銭程度しか受け取って貰えない 「〇〇君もいずれ おごる立場になるから それまで財布はしまっとけ」 そんなふうに言ってくれる いつだったか酔った上司を 家まで送って行った際 奥さんが俺を駅まで送るからと 車を出してくれた いつも世話になっている話を よいしょ混じりに話したら 奥さんは笑いながら 「本当に困った時に助けてくれるのは ほんの一握りだけなのだから 甘えさせて貰える時に甘えて お金も心も貯めときなさい」 そんなふうい言ってくれた あゝ、この奥さんだから あの上司なのだと 妙に納得した それからも 上司と営業に出ればおごられて 財布を出しては窘められて 時も経てば俺は上司に成っていて 同じようにおごる立場となり 財布を出さない部下に少し苛つく まぁ、払わせる気は無いけどな 一寸だけイラッと来るんだよなぁ
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