詩を謀らず

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詩を謀らず

伝えたいことを 素直な言葉で綴られた詩は 心に染み入る 内包された鬱屈を 体外へ捨てるように吐き出された詩は その力に圧倒される 綺麗に書こうとすればする程 安っぽくなる 格好良く書こうとすればする程 陳腐になる 面白く書こうとすればする程 小賢しくなる 吐き出す程の熱もなく ただ自分の凡庸さを見つめ 言葉を捏ねる そう、私は言葉を 紡ぐのではなく捏ねている 言葉を捏ねくり回し 出来上がる練り物が私の詩だ それを自覚している間は 私はまだ 大丈夫なのだと思いたい 在りもしない才能を 探し 絞り出し 偽装し 謀るまい 量産される空っぽの(ものがたり)に 在りもしない価値を 乗せて差し出す様な 愚行には走るまい
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