輪の穴の向こう側

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輪の穴の向こう側

穴と言うか 輪と言うか その輪っかの中身をね 埋めたくなるんだ ハンカチで隠すのでも ティッシュを詰め込むのでも良い 埋めたくなるんだ 例えば 人差し指と親指で 輪っかを作るだろ 輪の外側と輪の内側 向こう側に見える風景は 一つの連続したものである筈なのに 輪で区切られた途端に 別のモノに見えて来るんだ 外側が 僕らの生きている世界なのに対して 内側は 時間とか空間とか次元とか 全くの別物に感じるんだ いつか、その異界が 穴を通って世界に流れ出し 僕を飲み込んでしまうのではないか そう思ってしまうと 僕はが堪らなく 恐ろしくて 向こう側が見えないように 埋めたくなるんだ
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