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悪魔の少女
夕暮れ時に御上侑哉のオフィスに、その女性はひっそりと現れた。
ネズミ色の高価なコートに濃いめの赤の鍔のついた帽子を目深に被り、その清楚な佇まいに気品すら感じる。
事務所に来ていた茶木賢也が、コーヒーを出すが、
そのマグカップの汚さや、御上たちのチンピラのような出で立ちに、女性は露骨に顔色を変えたが、茶木は気にもせずにソファーに座ると話を切りだした。
「んで、どうしたんすか?」
「……いえ、やはり帰ります」
「えー。折角、来たのに」
茶木はスカジャンのポッケに手を突っ込むと
不思議そうに立ち上がり、去ろうとする彼女を見つめたが
デスクの机に足を乗せタバコを吹かしていた御上が
「いいのか、帰って?どうしょうもなくて、うちを訪ねたんだろ。まあ好きにすればいいが」
その言葉に女性は、ビクと反応すると必死の顔で振り返り
「お願いします。どうか娘を、娘の亜理沙を助けて下さい」
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