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 大丈夫ですか? とカップルは樹に声をかけるものの、あまりの苦しみように、私と待ち合わせをしていることを聞き出すのが限界だったそうだ。搬送される直前に、待ち合わせ相手がいたので教えてあげたいと救急隊員に搬送先を確認してくれたのは、ファインプレーとしかいいようがない。    そのカップルから樹が搬送されたであろう病院を聞いて、私は電車に飛び乗った。    樹が重い病気だったらどうしよう。重い病気を樹自身が自覚していたらどうしよう。思い浮かぶのはネガティブなことばかり。恋人とも、妻とも別れたのだって、人生の最期を綺麗に迎えるための身辺整理だと解釈できなくはない。
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