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バスケ部男子の中で私が会話らしい会話をするとしたら樹であり、樹以外はあり得なかった。だからといって樹のことが好きだったかというと、決してそういうことではなく、あくまで、女子と近い感覚で接することができたという、ただそれだけだ。
思い出らしい思い出はないが、樹には二つ上の姉と一つ下に弟がいることはかろうじて覚えている。写真を見せてもらったことがあったのだ。皆、顔がそっくりで――そっくり過ぎて笑ってしまった。
私の思惑通りお姉さんは可愛いかったが、意外にも弟は短髪だった。弟はくせ毛で、それが気に入らなくていつも短くしているらしい。せっかく可愛い顔をしているのにもったいないと思ったことも記憶には残っている。
何事もなく高校を卒業し、樹のことなんてとっくに忘れてしまっていた。
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