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ーー
「では、ご納得の上、捺印と署名をお願いします」
兄貴のクソ長い説明がようやく終わったようだ。
彼は真っ青な顔をしながら言われた通りにサインする。
一方の美幸ちゃんは未だ泣き止んでいなかったため時間がかかったが、なんとかサインしてもらうことができた。
続けて私がサインをして割印を押し、それぞれ一部ずつ相手に渡す。
これで完了。
本当の本当に終わり。
……
一体なんでこんなことをしてるんだろう。
なんで私がこんなに嫌な気持ちになりながら頑張らないといけなかったのか。
ただ普通に恋愛して普通に結婚するだけだったはずなのに。
この二人のせいで何もかもが無になった。
改めて怒りが湧いてくるが、それをぶつける気力がない。
「本日はお疲れ様でした。お気をつけてお帰りください」
私は気持ちのこもっていない棒読みなセリフで帰宅を促した。
彼も美幸ちゃんも私とは目を合わさず席を立った。
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