SNSの精

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 それを聞いて、俺はすぐに思い浮かんだ人がいた。俺が会社で好意を寄せている、A子さんという女性がいる。だがどうやら同僚のSも、彼女を狙っているらしい。A子さんは俺が話しかけると笑顔でこたえてくれるのだが、Sともよく楽しそうに話している。今のところ、彼女にとって俺とSはどうやらフィフティーフィフティーらしい。だが、本当のところはどうなのか。 「じゃあ、会社のA子さんとSのやり取りがあったら見せてくれ。あるかわからないが……」  内心、それがないことを祈りながら、俺は言った。 「わかりました」  SNSの精はスマホの中に戻っていき、すぐにまた現れた。 「ありましたよ。ちょうどついさっきトークをしていたようです」  あったのか……俺はガッカリしながら、SNSの精が表示してくれたトークの画面を覗いた。 A子「おやすみー。明日も仕事、がんばろう」(ネコの周りにハートが飛んでいるスタンプ) S 「おやすみ」(クマが吹き出しでおやすみと言っているスタンプ) 「二人はもう、付き合っていたのか……」  俺はがっくりと肩を落とした。SNSの精は気の毒そうに、そんな俺を見ている。 「それでは、私はこれで……」 「あ、ああ。ありがとう……」  傷心の俺がうわの空で言うと、バッタみたいなSNSの精はスマホの中に戻っていった。
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