たぶん、こっち

7/45
前へ
/45ページ
次へ
**   「今日、飲みに行こうぜ」  真木の誘いに頷いた。 「ああ、いいな」  ビールのうまい季節になった頃だった。   「誰と飲みに行くと思う?」真木は顔からウキウキが溢れていた。 「誰? 二人じゃないのか……」  真木の無駄なウキウキが俺をウツウツさせる。だいたい見当がつく。真木がこの顔の時は相手が女性であることに。一気にやる気が失せて、やめておく、その一言を口にしようとする前に、真木が許すまじと俺を睨み   「強制参加。予定がないのは知ってる」  と、俺のこの日の予定が決まってしまった。      はあ、面倒くさ。 「せめて、ビールのうまい店を」とだけ伝えた。   「あっれぇ、聞かないの? 誰と行くか、聞かないの?」  聞いてほしいのか。   「言いたいなら、言え」 「経理部の人たち」    語尾にハートマークをつけて、真木はご機嫌だ。  経理部の女性と飲むのになぜそんなにご機嫌なのか。聞かなくても、勝手に話してくるのだろうと、真木の方に視線だけくれてやった。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

785人が本棚に入れています
本棚に追加