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「種も仕掛けもありません」
握りしめた小さな手を下に向けて、俺に差し出す。
「それ、言うなら“どっちだ? ”じゃないのか?」
よくあるやつだ、右手か左手、どっちに入ってるか当てる。それだけのやりとり。
俺の指摘を気にすることもなく志乃は、早くと言わんばかりに首を傾げて待つ。
「右」
当たっても外れてもどっちでもいいもんで適当に指差すと
「当たり」
そう言って、俺の手のひらにコロンと一つ、その右手に握っていたものを落とした。
……種。小さな種だった。
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