たぶん、こっち

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 今週から始まったビアガーデン。  随分と日が長くなったことを感じながら飲むビールは格別で、俺と二人の時は、にやけ顔のファンタジスト真木は、経理部の女性たちを前にそれを一切出さずに、彼女たちの話を聞き入っている。    ……様に見せかけてるんだろうが、あんなに上手くやるのは、さすがだな。    どう見ても、“大人の余裕ある男”    経理部の女性たちは逆に普段より少し砕けた装いだ。やっぱり根が固いのか、そう鬱陶しくはない。    来て良かったとまでは思えないが、悪くはないな。  区切りのついた仕事があったせいかそう思えた。    通り抜けるのは温い風だが、それも……心地よかった。    俺の目的はうまいビールを飲むことであったのだから、達成されたわけだ。  参加したことで真木にも付き合えたわけだしな。    そんな悪くはない日だった。代わる代わる何人かと話す。面識はあった人たちばかりだ。特に差し障りのない会話は俺からだったり、向こうの女性からだったり。  時々は、真木に目をやりながら、時間を過ごした。
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