たぶん、こっち

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 ――週明け、開口一番 「楽しかったなあ、金曜日!」真木が言う。 「……何かあったのか、あの後」 「ああ、誰かのおっぱい見れたかって、そんな話?」    月曜日、朝イチ。結構キツイものがあるが 「まあな、そんな感じのことだ」と、答えた。楽しかったなどと言うのだから、それくらいの事でもあったのかと訊いただけ、だ。   「いいや、連絡先は交換したけど、一度飲んでみたかったんだよね、それだけのこと」 「なんだ、団体で帰ったから誰かと……何かあったのかと思った」 「うーん、ま、見れるなら見てもいんだけどね、そんなんじゃないって言うか」 「あわよくば、じゃないのか?」 「そだねー、5人もいたからね。おっぱいの一つくらい……あ、なあ、おっぱいって二つで一カウントか?それとも個々を尊重して、やっぱ左右で一つ二つと数えてやるべきか?」    ファイルで真木の顔を遮ると、「好きにしろ」と言った。    真木はそのファイルを手で避けると、 「お前は?」そう聞かれ、あの日の帰り道の事を思い出した。   「ビール、旨かった」再びファイルを真木の前に出すと 「これ、お前のファイルだ」そう言って突き返した。    俺は……何もなかったとは云いがたい。 『好きなんです』そう言った彼女の顔を思い出す。どんな顔だったかな、と。  
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