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「仲いいんだな」
席に戻ってきた真木に、ぼそり言ってしまう。
「え、ああ、志乃ちゃん? 湿気で髪が広がるーっつって。俺ら、天パ友達」
「……」
それで髪触ってたのか。それにしても……
「女性の髪に気安く触れるんだな」
「……何、お前。妙に突っかかるね」
言われてみれば、そうなのか。あんな真木は、今に始まった事ではない。
「お前のそういうとこに、感心しただけだ」
「そうか」
嬉しそうに笑う真木に、誉めてないけどな、と苦笑した。
「俺ねえ、今オトしたい子、いるんだよね」
サッと血の気が引くのを感じた。何に、怯えるのか、俺は。考えるより早く、口をついた。
「山内さんじゃ、ないだろうな」
ないだろうなと言ってしまったことで、真木が察したのか、目を見開き、数秒後にはその目をにやにやと細めた。
「違うけど? ふうん、お前あんな子がタイプか。案外、目立たない感じが好きなんだな。良く見りゃ可愛いけど……」
目立たない?彼女が?
「そんなことはないだろう? どこにいても目につくけど……」
ここ最近は、だけど、間違いない。
「はあん。なるほど、なるほど、なーるほど」
……面倒くさい流れになりそうだと、前もって特大のため息を吐いておいた。
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