たぶん、こっち

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「お前は、“俺のことを好きな山内さん”が、他の男と仲がいいのが気にいらない。なぜなら、“俺のことを好きな山内さん”だからだ。“他の男を好きな山内さん”になったら、困るもんな」   ……。    ああ、案外的を得ているのかもしれない。  だから「かもな」とだけ返した。   「やっぱ醍醐味だよな、恋愛の」 「どこが」    俺にはさっぱりだ。 「彼女の作戦にハマってんじゃね? 俺も駒に使われてたりして……」 「はは、まさか。お前じゃあるまいし」 「例えば、少し嫉妬させるとか、お前見てると有効だな。使える……」    真木は今度は自分のオトしたい女性の話をしているのか、うんうん頷いていた。   「よくやるな、全く」 「どうしても、オトしたいんだ。蒔かぬ種は……生えぬ。種を蒔いて、仕掛ける。全力でオトしたいほどの相手なんでね。だから、いつでも俺のノウハウ、伝授するぞって。ま、お前は顔面が仕掛けみたいなもんだからな……」 「なんだ、それ。どのみち俺は、そういうの向いてないからな」    酒が入ると眠くなる。真木が相手とあれば、遠慮なく欠伸をして、今度こそ、帰りたいと、時計を見た。     「志乃ちゃんにとって……“全力でオトしたいほどの、相手”って事かな、お前」    俺に気遣うこともなく、真木が陽気にそう言った。  
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