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──外回りの帰り道
「ちょっといいか」そう言った真木に頷く。真木は有名なチョコレート店に入っていった。真木は甘いものが好きではない。ということは、女性に買うのだろう。
「いやあ、昨日、岡田っちに頼みごとしちゃって。そのお礼」
と、小さな紙袋を、下げて出てきた。
「飯奢るほどでもない時に便利なんだよね、ちょっと“いいチョコ”」
最も、営業事務の岡田さんは俺たちの補佐が仕事であるのだから、何か仕事頼むのは業務の範囲なのだが、それを少しこえたということか。
「1粒300円以上のチョコって自分で買うと考えたら高いだろ? でも誰かに送るとしたら300円の金額は安い。ちょっといいチョコって、間違いないんだ。会社でも食べやすいしな、マカロンじゃ、ダメなんだよなあ……」
チョコなど、確かに自分になんて買わないな。
バレンタインに貰うので、高級チョコの値段は把握しているが。
真木は、営業事務の岡田さんに手渡す時
「みんなには秘密ね」と、言葉を添えた。岡田さんはまんざらでもない顔をして受け取った。
チョコ……ねえ。
──それからしばらくしたある日、この日の真木は、コンビニで製菓会社のよくあるチョコを手に取っていた。
「何だよ、お前そんなの食うのか?」甘いものは嫌いなはずだった。チープな物だし、女性向けではないのだろうと思った。
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