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「逆もあるぞ、逆」
「逆?」
「めちゃ良いことがあった時!」
「ああ、なるほどな」
「とりあえず、少しばかり平常心を欠いた時、だな。例えば、それは一瞬でもいいんだ」
「一瞬? 」
「そ、急に話す距離を詰めて動揺させたり、少し……怒らせたり。それで、言い過ぎたなって、罪悪感を持たせる。そんな、いつもとちょっと違う精神状態を作って、その時に口説いたりね。混乱に混乱を重ねる」
次から次へと、持論なのか、手の内なのかを語る真木の顔に、学生時代に通っていた塾の講師の要点だけを次々と教えてくれた顔を思い出していた。
いや、あっちの要点は随分と役に立ったがこちらはどうだろ。
真木は、経験談なのか、それともこれから試すのか。
返事もしない俺に、子供のような笑顔を向ける。
ゲームじゃないんだから、と返す前に
「な、楽しいだろ? この疑似恋愛みたいな次期が一番」
「疑似? 本気なんだろ、お前」
「そ、本気。だから、どれも通用しない」
「……なんだそれ」
「知らないのか? 恋の魔法をかけられると、自分で自分が上手くコントロール出来なくなって、結局、ミエミエの罠しかかけられなくなんの。だから、お手上げ!」
……どうやら、体験談でもこれから試すわけでもなさそうだった。
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