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「お手上げ、なのか? 今」
「そうだな、それに近いかもなー」
こいつが、こんな風に言うのは珍しく、その彼女のことを、よっぽど好きなのだろうか。
真木の顔からは、意気消沈してるわけでもなく、至極楽しそうだ。
恋の魔法にかけられたのかなんて、中学生女子みたいなことを言い出したかと思うと、それとも彼女の恋の罠だったのかなと言い出したり
何にせよ
「たまらんよね、こういうの」と、惚けきった顔でそう言ったので
ああ、今日も一体何の時間だったのかと、俺は思っただけだった。
仕事帰りの、こんなどうでもいい時間。こいつと話してるとだいたいのことは、どうでもいいように思えてくるから不思議だ。
「今度、その女性に会わせてくれよ」勿論、ただの興味本位だったが
「いや、そんな刺激は今は必要ない」と、真木はそこだけは真面目に返答してきた。
「じゃ、結果だけまた聞かせてくれ」
「……良い結果ならね」
真木のこのバイタリティーでも振られたりするのか。
勿論、この男は、本人の前ではそれはもう綺麗にこんな姿は封印するものだから、上手くやってるイメージしかなかった。
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