たぶん、こっち

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 ──1階のエレベーター、小さな台車の駒が引っ掛かったのか、そんな女性の姿を見つけ閉まりかけたドアを慌てて手で止めた。     「危ない」 「……ありがとうござ……い……ます」    ゆっくり目があって、お互いを認識する。  ……経理部の(俺のことを好きな)山内さんだった。   「何もこんなに積まなくても……」その台車を見て、そう言った。それどころか、力のありそうな男に頼めばいいものを。   「……あの、いつもは宅配で注文するんですけれど、明日までも待てないくらいの最小限の物さえ足りなくて、買いに言ったら……その……まとめ買いの方が安くて、経費削減? とか思っちゃって」 「誰か力のある奴に頼めばいいでしょう? 」 「今、今日使う備品すら切れてるのに誰も気づかないくらいの忙しさで、さすがに誰かにも頼めなくて……」    なるほど、決算月か。   「……じゃあ、俺が」  そう言って、彼女の手から台車を引き受けた。   「あ、ごめんなさい、営業部だって今忙しいでしょう?」 「まあね、でもそっちほどじゃないさ」    適当に会話をして、営業部とは違う階まで台車を押した。1つ2つ角を曲がったくらいだろうか、俺の手元をまじまじと見て   「凄いですね」彼女がしみじみとそう言った。
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