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盛大なため息。こいつより俺の方が馬鹿馬鹿馬鹿なのかは知らないが。
「あのな、そんなに飢えてない。向こうにも都合があるだろ。下心過ぎないか? お前じゃあるまいし」
「俺は、女性の家に行っても何もしないぞ」
それこそ、馬鹿だろ。そんな嘘を信じる人間が馬鹿だろ。
「へえ」
「あ、信じてないな? 1回目は何もしない」
「……1回目は?」
「そ、女性だって全く気がない男を家に誘いはしないだろうが、女性は軽いと思われても嫌だろ? こっちだってその気がミエミエだとドン引きされる」
「何だ、その攻防戦」
「そのくせ、何もなく茶飲んで帰ると肩透かし。紳士な男だと株が上がるが、しばらくすると、あれ? そんなつもりじゃなかったのかな。もしくは、私に魅力がないのかしら、と思ってくる」
真木が裏声で身をくねらせる姿に、体が冷えたが、黙って話を聞いていた。
「つまり、もやもやするだろ、向こうが。それからちょっと期間置いて、こっちからまた飯でも誘う。てな感じ。結局な、顔付き合わせて会ってる時じゃなく、会ってない時に恋心は育つんだ」
「一人相撲」
「向こうの、だろ?」
「お前の、だ」
そう言って、真木に背中を向ける。
心の中で馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿バーカと返しておいた。
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