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とは言え、就業時間を終え、そこのコーヒーショップではなく、チョコレート店にいたのだから、俺も馬鹿なのかもしれない。
“ちょっといいチョコレート”なんて、選んでるのだから。馬鹿馬鹿馬鹿……なのかもしれない。
──
彼女が会社から出て来たタイミングで、彼女に手渡したのは今日彼女から受け取ったコーヒー豆と、苦いコーヒーによく合うだろう洋酒のジュレが入ったトリュフチョコレート、が中身の紙袋。
「俺のうち、ミルがなくて。君が飲むといい」
そう言うと、彼女と肩を並べて歩き出した。
「ありがとうございます、逆に気を遣わせてしまって、だいぶお待たせしました? 」
「うーん、勝手に待ってただけだしね。忙しいんだね。ちょうどいい、ほら甘いもの」
「このコーヒー本当に美味しくて、堀川さんいつも苦めのコーヒー飲んでらっしゃるから」
……俺の好みのつもりで選んだのか。ふうん、じゃあ今度俺も買ってみるか、そう思って
「気持ちが、嬉しいよ」
ついでに、よく見てるんだなと気づいた。真木のように、彼女の家にお邪魔しようと仕向ける気はなかった。
それなのに、彼女がこう言った。
「私の家にはミルがあります」
と。
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