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「カイワレ大根にね、ちょっといい鰹節をかけて、ほんのちょっぴりお醤油を垂らすの」
……それはそれは旨そうに志乃は言った。旨いのだろうが、それが最期に食べたいものかのか。
「あはは! わかんないよね? みんな、これを言うとそんな顔になるの。だからねえ、最近は聞かれたらN.のキャトルカールか、望月庵の上生菓子って答えてるの」
それなら、誰もが頷く。このあたりなら洋菓子ならN.Quatre quart、和菓子なら望月庵。
最近どちらも取り扱うショップが出来たばかりで、メディアでも大きく取り上げられていた。
ふうん、変わった子だ。とは思ったが……だからといってどうというわけでもない。
──それからといえば、後日、スーパーに寄った際、カイワレ大根と鰹節を買って帰ったくらいの事だ。
カイワレ大根なんて、初めて買った。安いのだな。これが最後に食べたい物 ねぇ。
志乃が言った通りに食べてみると、意外に辛みが旨かった。簡単なビールのアテにいいかもしれない。
──おかげで……それからは……昼飯に頼んだ定食のメインにパラリとかけられていたり、サラダに入っていたり、そんなカイワレ見るたびに、志乃の顔が浮かんだ。
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