たぶん、こっち

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「誰だ?」  社用車へ戻ってきた真木に聞いた。   「はあ、お前なあ」真木が俺に呆れた目を向ける。   「さっきの、合流した子だよ。コンビニ入ったけど、見てたろ? バック駐車出来ずに頭から突っ込んでんの。じゃあ、出る時はバックになるわけだ。出せないぜ、この混んだ駐車場では……」 「はあ。で、それでお前に何のメリットがあるんだ」 「あの子が、ちょっと不安じゃなくなったのと、俺がちょっといい気分になったこと」    ……まあ、そうか。だけど   「俺たちは仕事中だけどな」 「いいだろ、アポには少し早い。余裕が大事です」    そうか、と納得した。起こることは必要なことばかりではない。それに、損得勘定でも下心だけでもないってことか。     「ま、あわよくば……」 「なんだ、連絡先でも聞きたかったか?」 「いーや、あの子そんな余裕なかったしな」 「ん?」 「こういうことしてたら、あわよくば……おっぱいくらい見れるかもしれないしな」    この日一番、真面目な顔で真木は言った。    ……馬鹿だ。下心の一番下世話なやつだ。呆れ返って反応を返せずにいた俺に   「なんだ、お前はおっぱい派じゃないのか」と、ぽつり呟いた。    とにかく真木は出会った時からこの調子だった。  
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