たぶん、こっち

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 聞けば、誰というのではなく経理部の数人の女性。今日空いてる人は全員、誘っただけの話だった。ただの飲み会だ。   「いいか、お前、経理部の女性だけなんだよ。社内でまだ飲んだことないの」   ……ああ、そうですか。何で制覇したいんだよ。   「お前と一緒なら良いっていうから、絶対に来てもらわねえとな」 「はあ!? ダシに使ってんのか」 「ふっ、ばーか、勘違いするな。いいか、アイドルグループはな、グループだからこそ、光る」    ……。   「はあ」面倒くさ。ため息で返す。   「一人一人は、良く見るとそこまで目立つタイプでもなかったりすんだろ? だが、数いたら光る。グループだからこそ、光り合う。とても、いい。俺とお前も……ああ、俺たちは単品も光ってるが、それはさておき。イケメンが二人並べば圧巻だろ? 」    もうため息すら、面倒臭くなって寝てやろうかと目を閉じた。 「経理の女っていいよね」    割りとデカイ声で言う真木に慌てて目を開けてまわりを確認した。ここが、社内である限り。   「独特の雰囲気がある。落ち着いた、何ていうか、大人しい」 「真面目で地味で固いってことか?」 「……まあ、それがいい」    どれがいいのか知らんが、何でもいいんだろう。そんなことより、コーヒーでも飲みたい。 眠くなる午後のひととき、そう思った。
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