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プロローグ
もし、今、自分のプロフィールを書くとしたら、どう書くだろう。
—水上 祥。30歳。
国立大学工学部を卒業後、東証1部上場の最大手建設会社に入社。土木事業部2課に配属、真面目に働き続け、測量技師、掘削技師といったキャリアアップのための資格を次々と取り8年目。現場監督の資格条件まであと2年。仕事には真面目。
先週の合コンでは、気になる女性のアプローチも上手く行き、直近では念願だった憧れの建築家との合同プロジェクトに、技師としての参加が決まった。
こんな感じだろうか。
ここまでの自分の人生をリストアップすれば、地道に目標をひとつずつ積み上げ、そこそこ成功していると言える。仕事が地味な分、理想的なスピード出世とは言えないが、この後、結婚が入り、出世が叶えば、安定した将来になる。
人生ゲームに例えるなら、サイコロを振り続けても降り出しに戻ることなく、着実に進んでいる状態だ。
いい事もあれば、悪いこともある。真面目にコツコツと努力すれば、必ず希望は結実するのだと。
後から思えば、恥ずかしいほどの世間知らずとも言えるが、この頃は無邪気にそう信じていたのだ。
その日々を暗転させるには、誰かのたった一言で十分だということを、このプロフィールを書いていた頃は思いもしなかった。
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