Day 43 / Helicopter Grandpa has come

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「アリョーシャ!」 ツァーリはダーチャの許へ駆け寄ると、ぎゅっと抱きしめ頰ずりをして軽く唇を重ねた。 「ツァーリ!」 ダーチャも愛する祖父に再会できたことが嬉しかったようで、祖父のキスを当たり前のように受け入れている。 「おまえが行方知れずになり怪我したと聞いて、気が気でなかったよ。本当に無事で良かった。」 「ツァーリ、心配かけてごめんなさい。」 ダーチャはツァーリに再度キスをして詫びた。 「…。」 祥は呆然として家族の再会劇を見つめている。 ちょっと待て。 なんだよ、これ。 いくら溺愛されてるからとは言え 普通、成人した孫とガッツリ、 マウスツーマウスでキスするか? 実は、この二人、 ただならぬ関係とか?! ってか、アリョーシャって! アレクセイじゃないのかよ! 何でまたいきなり謎属性増えてんだよ! 祥が密かにパニックに陥ったと気づいた、カリムがそっと側に寄って来て、こっそり耳打ちする。 「ただの習慣。ダーチャの恋人は君だけだから安心して。アリョーシャはアレクセイの愛称。ロシアでは親しい間柄だと愛称で呼ぶんだよ。」 ダーチャの、人との距離感が狂っている理由は、元来の性格に加え、ロシアの習慣が関係している。ロシアでは、身内に限らず親しい間柄だと、男性同士でも挨拶の際、普通に抱き合ってちゅっ、とキスをする。ロシア人のダーチャとツァーリにとっては、ただの習慣だが、事情を知らない外国人には衝撃の光景だ。 F国はロシア人への深い理解がある。何と言っても、F国はかつてロシアだった地だ。習慣を知らぬはずがない。 こんなホモソーシャルな習慣がある癖に、ロシアでの同性愛者へ向ける目線はかなり厳しく、ヘイトクライムによる殺人事件も起きている。当然の如く、ツァーリは祥にいい感情を持っていない。ダーチャを溺愛している分、尚更だろう。 もう、隠し通せぬと祥は関係を大っぴらにしてしまったが、自分とダーチャの間にある、異文化という最も大きな壁をいま、目の当たりにし、なす術も無く立ち尽くす他はなかった。
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