Day 43 / Helicopter Grandpa has come

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ツァーリは愕然として祥を見る。 ダーチャと一緒に居たい、必ずそう言うと思っていたからだ。それだけではない。ダーチャを自由にしろ、とも。 そして何より愛する孫が、自分から離れて行くなど考えられない、そんな表情だった。 ダーチャをしっかりと胸に抱き、祥はツァーリを見た。 「ツァーリ。 何故アレクセイがこんなにも純粋に育ったのか、ツァーリの姿を拝見して分かったような気がします。 カシュガラで誘拐され、俺は痛感しました。 富や権力を巡る抗争の場に身を置けば、見たくないものを見、聞きたくないものを聞き、言いたくない事を言わねばなりません。 その時の俺の救いになったのは、アレクセイ—俺にとってはダーチャ—が側に居てくれた事、ヤンが支えてくれた事でした。リタは俺が恩人だって言いましたが、俺から見れば、恋人のダーチャも、相棒のヤンも俺を救った大切な恩人なんです。 ただ側に居るだけで癒されるダーチャを、目に入れても痛くないほど溺愛してしまう気持ちは、とても良く分かります。 ツァーリがダーチャをF国に留め置いたのは、いつでも会おうと思えば会える距離だからではありませんか。」 ツァーリは冷たい目で祥を一瞥する。 「何が言いたい?」 「俺は、ダーチャを自由にする事で、ツァーリの元へも自由に飛べるって思うんです。」 ツァーリは苦笑すると、手を払う振りをして言う。 「若造が知った口を。もういい、去れ。」 祥は涙を拭くダーチャに優しくキスをする。 「ダーチャ。俺は部屋で待ってるから、ツァーリとゆっくりしておいで。」 ダーチャは頷くと、ツァーリに駆け寄り、ぎゅっとハグをした。 「僕は何処にいても、ツァーリの事は絶対に忘れないよ。ツァーリの孫だから。世界のどんなところに居ても、何かあったら直ぐに飛んで行くよ。」 「アリョーシャ…。」 ツァーリの目に涙が滲んだ。それは肩書きの消えた、孫を思うひとりの老人の貌だった。 「僕、ツァーリのこと、大好きだもん。」 そう言ってキスをし抱く孫の腕は、がっしりとした大人の男のそれなのに。ツァーリの脳裏に、小さなダーチャが自分をぎゅっと抱く幼き姿が重なって見えたのだった。 ラストシーンのイメージイラストです。 宜しかったらどうぞ。 https://estar.jp/pictures/25712089
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