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バハード帰還の朝が来る。
フェムナの駐車場に戻っていたボーリング機材や重機一式の点呼を終え出発を見送る。
祥は自分とダーチャの荷物を抱え、ダーチャと一緒に帰りのバスに乗る。
何だろう。
妙に回りからの視線を感じる…。
悪意や嫌悪でないにせよ、明らかにそれは、ダーチャと祥の関係に対してで、ここ数日のイチャイチャぶりは、完全に、現地調査チームの公然の秘密となっていた。
後ろに座るトモが乗り出してケタケタ笑う。
「本当、ショーさん、最高。武装警官にさえゲイバレしてんのに、警察行ってよく逮捕されないで帰って来られましたよね。」
祥はシートに座ると、苦笑する。
「お願いだからその話は勘弁してくれよ。」
「で、ショーさん、いつ日本帰るんすか?」
ダーチャが祥をぎゅっと抱いてトモを威嚇するように睨むと、祥はダーチャをの腕に優しく触れて宥めながら返事をする。
「暫く先かな。ビザの件で一回は帰国しなきゃだから。」
トモはダーチャの威嚇も意に介さず微笑んだ。
「じゃ、その時「二人っきりでバーにでも」飲みに行きません?ショーさんも東京でしょ。」
ダーチャはまるで番犬のように吠えた。
「ショー、行っちゃダメだからね!」
祥はクスクス笑うと日本語で言う。
「トモ、面白がって俺の可愛い番犬を刺激しないでよ。」
惚気に当てられたトモは肩を竦め席に戻り、微かに呟いた。
「俺、マジでショーさんのコト好きになりそうなのに、あんな大型アホ犬がいいとか、意味わかんない。」
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