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ヤンのパスポート点呼を終え
バスはフェムナの街を出発した。
公道に向かう途中、ダーチャと手を取り合う祥の視界に、真っ白なカンドゥーラが目に入る。
祥は叫ぶ。
「ストップ、ストップ!」
再びバスは急停車し、人気の無い場所で人の姿が見えた事で、バスの中は行き以上に騒然となる。
装甲車から降りた武装警官は、カンドゥーラの男を警戒し、銃を向けた。
祥は双眼鏡で人物を確認すると、双眼鏡をダーチャに渡して迷わず窓を開け、バス内が一気に緊張しパニックになる。
ヤンは呆然として見る。
「気でも狂ったのかよ、ショー。」
双眼鏡の先の人物を捉えたダーチャは言う。
「違うよヤン、古井戸のイマームが、立って僕たちを見送ってくれてるよ!」
ヤンも身を乗り出す。
「マジか!どこだよ!」
三人はバスから手を振って、あらん限りの声で叫ぶ。
「アッサラーム アライクム、イマーム!」
皆が無事でありますように。
平和でありますようにと、強く祈りながら。
それからまもなく。
チームF国のお馬鹿三兄弟は直ぐに同乗の武装警官に引っぺがされた上、きっちり窓を閉められ、危険過ぎる行為だとしこたま説教されて、皆の失笑を買った。
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