Day 0 / X-day

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部長室は部署の上階にあり、上下関係をあからさまにしていた。部長クラス以上には専属の秘書が付き、部長室に入るには秘書を通さねばならなかった。 「部長、土木事業部2課の水上さんです。」 華やかなフレグランスをつけた美人秘書に連れられ、部長室に入る。デスクの、革張りのチェアに部長は座っていた。秘書が一礼し、席を外すと勿体ぶった口調で話しかけた。 「おう、来たか。」 和やかな世間話もなく、一兵卒の如く機微に祥が頭を下げると、部長は満足そうに笑う。 「まあ、顔を上げ。」 「失礼します。」 挨拶もそこそこ、要件は唐突に始まった。 「君、ウチの会社がお上と一緒に海外の発展途上国支援やってんの、知ってるだろ?」 この場合のお上は、国交省でなく外務省の事だ。官民合同の海外事業プロジェクトは、花形の海外事業部が担い、土木は技術提供以外に縁がない。 「はい。社報を拝見しました。」 「昨日な、そこのお大尽と会食してな。お大尽が上級顧問として名を連ねる国際NGOはおまえも知ってるだろう。今、地下資源の豊富なF国でガンガン掘ってくれる、フレッシュな掘削技師が必要なんだと。」 「はあ…。」 部長の意図が全く読めない。
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