弁護士

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 十一月二十四日、朝七時二十分頃。犬の散歩をしていた男性が、河原にて死体を発見。  捜査の結果、近くの清里理容美容専門学校に在籍する塩見裕梨と判明。死亡推定時刻は前日夜七時半。  散乱した彼女の荷物の中から見つかった手帳より、前日の夜飲む約束をしていたと言う同専門学生の中沢礼生を重要参考人として任意同行を求め、事情聴取を行う。  中沢は夜八時に行きつけの居酒屋で待ち合わせをしていたが、学校に居残ってカット練習をしており、つい時間を過ぎた。慌てて店に向かったのが九時頃。店に着いても塩見がおらず、何度か携帯を鳴らしたが留守電だった。一時間ほど店にいたが、十時頃には帰宅したと供述。  その後、被害者の携帯に夕方六時頃、中沢より自宅で飲もうと言うメールが入っており、殺害場所が学校と中沢の自宅の中間点であったこと、凶器とされる鋏に中沢の指紋が残っていたことから、中沢を被疑者として逮捕。  死因は鋏による十数か所に及ぶ刺し傷からの失血死。  凶器の鋏は学校の備品であった。  被害者の携帯は殺害現場から数キロ離れた側溝から見つかっており、犯人が証拠隠滅のため捨てたと見られる。鋏は被害者に突き立った状態で発見されている。  待ち合わせに使われた店は、学校を挟んで中沢の自宅とは反対方向にあり、同校の学生がよく利用している。事件当日も、九時半頃中沢が一人で飲んでいるのを数人の生徒が見ている。  散乱した被害者の荷物には、手帳や化粧品類、財布はあったが、自宅の鍵については見つかっていない。財布には学校近くの商店街のレシートが数枚入っており、酒類や惣菜等、購入したものが遺体から数メートル離れた場所に袋ごと落ちていた。  
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