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「わぁ…素敵」
見渡す限りの花畑に
幼い子供のようにはしゃぐ姫。
花々の匂いが僕らを包む。
「ご無理はなさらないでくださいね」
こちらとしてはいつ体調を崩すかわからないから気が気ではない。
お医者様にも十分注意するよう言われた。
姫がお花畑に行きたいの と言うので
僕が知る中で一番広い花畑に連れてきた。
色とりどりの花たちは
姫の花柄のワンピースとよく合っている。
「私チューリップが好きなの」
姫はチューリップの前にしゃがみ、愛しそうに眺めていた。
「可愛いです 姫のように」
僕は隣にしゃがみこみ、愛しい姫を見つめた
「…私はこの花たちのように美しく咲き続けられるかしら」
そう零した言葉はどれ程の意味を持っているのだろう。
真っ直ぐに僕を見つめる瞳
透き通る瞳
「僕にとってリア様は何よりも美しい」
そっと花に触れるように小さな頭を撫でた。
姫は嬉しそうに、雪のように白い肌を赤らめ微笑んだ。この表情がたまらなく好きだった。
「私、この景色 一生忘れないわ」
そう呟いた彼女の横顔を
2人で見た花畑を
僕は一生忘れないだろう。
儚くて美しくて
脆かった
重みのある一言だった
私も忘れませんと呟いて
僕にとっての一番美しい花を抱きしめた。
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