7人が本棚に入れています
本棚に追加
第1話 めぐり逢い
目の前に立ちはだかるは、大きなお城
例えるならそれはシンデレラ城のような。
言うまでもなくこの王国のシンボルである。
僕はぽつんと城の前に佇み
城を見上げて息を吐く。
今日からこの王国の姫の執事を任されたのだ。
城のドアがギィと鳴り、スーツの若老が出てくる。
予め電話でお話した方であろう。
おおよその仕事内容と王国の話を説明してくださったのである。
「ようこそお待ちしておりました。先代の執事シードでございます。こちらへどうぞ」
優しさが外面にも出ている そんな印象を受けた。
シードさんは淡々と僕を城へと案内する。
ゴクリと息を飲んだ
中へ入ると、広い天井と空間が僕を取り込む。静寂が緊張感を掻き立てた。
目の前にははるか奥まで続く長い廊下が待ち構えていた。赤のカーペットが上品に煌めいている。
「姫の部屋へご案内します」
お願いしますと小さく呟いて、シードさんの2歩後ろを歩く。
長い長い廊下だった。
両サイドに等間隔にドアが設置されている。
どうやらたくさん部屋があるようだ。
その左側のドアを10見送ったところが姫の部屋だそう。
ガチャ
シードさんが手前にドアを引く。
僕はもう一度大きく息を吸った。
「どうぞ」
意を決して中に入る。
ふわっと香水のような、女性的な匂いが僕を包む。
息を呑んだ。
目に飛び込んできたのは
キングサイズのベッドで眠る小さな少女。
なんて幼いんだろう
肌は雪のように白く、腕は折れそうなほどか細い。
今にも消えてしまいそうだ。
「リア様」
シードさんが少女に近づき、そう声をかけると、幼い少女はゆっくりと目を開けた。
「おはようシード」
それは蚊の鳴くようなか細い声だった。
「…そちらは?」
ここで初めて少女と目って、どきりと心臓が大きな音をたてた。
吸い込まれそうな透き通る薄茶色の瞳で
なんとも美しく、儚かった。
「こちらは今日からリア様の執事にあたる者でございます」
「初めて リア様」
僕が口を開くと満足そうに頷いて
そう と微笑んだ。
今にも消えてしまいそうで
あまりにも儚くて
目が離せなかった。
「この王国では、執事を任された者はリア様が名前をくださるのです」
シードという名もリア様がくれたのです
とシードさんが嬉しそうに語った。
素敵なしきたりだと思った。
「僕にも名をくださるのですか」
「そうね…ライトなんでどうかしら」
ライト と心の中で復唱する。
「光栄です ありがとうございます」
僕は深々と頭を下げる
今日から僕はライトとして生きる
その覚悟を、胸に刻まなくてはならない。
姫がうんうんと頷く
「シード、ライト 私はもう一眠りするわ」
「かしこまりました いつでもお呼びくださいませ」
そうシードさんが答え、僕らは部屋をあとにした。
最初のコメントを投稿しよう!