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ぐずぐずとぐずる子供をようやく宥めて腕から下ろす。げんきんなもので、すっかり機嫌の直ったその子は、振り返りもせずきゃあきゃあ笑って走っていった。やれやれだ。
ぴょこぴょこ飛び回る小さな背中を見送って、私は改めて周りを見回した。
ころころ。
ふくふく。
ふにふに。
肌の色も、目の色も、髪の色も様々。もちろん性格だっていろんな子がいる。ずっと眠っている子もいれば、いろんな紐を取ってはばらまく気の多い子や、全くその気のないのんびり屋さん。と思えば、ちょっと目を話した隙に、いつのまにかいなくなっている子もいるし、直ぐに戻って来る子もいる。
私にそれを止める権利はないけれど、ここに限り、私は彼らを等しく愛し守らなければならない。
すると、一角から鳴き声があがった。
「これは、ぼくのっ」
「ちがうよっ。ぼくがさきにつかんだんだよ」
「ぼくだってこれがいい」
「…………………………………………ぼくもこれがいい」
私はたまに見る光景に苦笑した。男の子四人が一本の赤い紐を掴んで取り合いをしていたのだ。しかも誰も譲る気がない。経験上、もうこうなったら引き離すのは無理だろう。まだ泣き叫んでいないだけマシである。
とはいえ、立場的には、私は一応止めなければならない。
「こらこら。取り合いしないの。他にも紐はいっぱいあるでしょう」
「やだ。ぼくこれがいい」
「はなして、ぼくんだもん」
「やぁっ」
「………………………………だめ」
三者三様ーーならぬ四者四様。誰もがギュッと紐を掴んで自分のものだと主張している。いったいその紐のなにがそんなにいいのだろうか。彼らではない私には、その違いがよくわからない。数え切れないほど送り出してきたけれど、無数に散らばる赤い紐は、私には全部同じに見える。
私は今にも泣き出しそうな彼ら前に仕方ないと肩を落とした。原則、一人一本が望ましいのだけれど、原則は原則であって絶対ではない。四人なら許容範囲だろう。
「わかった。わかった。じゃぁ、みんな仲良く行っといで」
そうして、私は彼らの背中をポンと押したのだった。
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