ジン・デイジー※

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ジン・デイジー※

 薄暗い視界の先には、見た事のないベージュの天井と、よく知る香水の匂い。  ぐりぐりぐちぐちと、敏感な性器を誰かの手によってこねくり回されている俺は、気が付いたら冷たいシーツの上だった。  ずっと触れてみたかったミルクティー色の髪の毛先が、俺の腹をくすぐっている。 「ふぁっ……ぁっ……」  酔っ払ってるから感覚があまい。 直に触れられ、扱かれているのに射精までが遠くて焦れったい。  大体、なんでこんな事になってるんだ。  言う事を聞かない俺の手のひらは、ただシーツを握り締めてあまい刺激に耐えているだけ。 「念願の "伊織さん" から触られてる気分は?」 「んやっ……」  これは誰の声なんだよ。  俺の大事なとこを好き勝手に揉みまくって、たまにヘソにチュッてしてくるコイツは一体誰なんだ。 「良かった。 どんな俺でも好きでいてくれるんだよな。 半年……いや、四年待った甲斐があったわ」 「な、に……っ? おま、おまえこんなことして……ただで済むと……あっ」 「これを望んだのはお前だぞ、十和。 良かったな、念願叶って」 「ふざ、……けんなっ、おまえ誰なんだよ! なんで俺の名前、知って……っ」  訳のわからない事をベラベラ喋るなと怒鳴ってやりたかった。  俺の心を捕らえて離さないその人が、想像とはまったく違う声で喋ってる。 そして今俺は、産まれたままの姿……つまり、全裸。  すでに頭の中は大パニックを起こしていて、さっきの酒が残ってるのも相まって思考力はゼロに近い。  あげく、快楽に弱い童貞男のアソコはこんな状況でも扱かれて喜んでる。  何をどう考えたらいいって言うんだ。  情報量が多いよ。  ひとつ分かる事と言えば、初めて他人に触られて気持ちいいとか思っちゃってるのはきっと、コイツの顔が俺の怒りを削ぐって事。 「は? 俺は、お前の大好きな "伊織さん" 」 「ひぇ……っ!?」  そんな馬鹿な……!  俺は狼狽えた。 ゼロに近かった思考力が開眼する。  だがしかし、不機嫌な声と同時に性器をぎゅっと握られて身体が竦んだ。  地雷を踏んだらしいと分かって背中が震えた矢先、それを察知したコイツは俺にとっては一番卑怯な手を使いやがった。 「どんな俺でも好きでいるって、最高の告白だ」 「ふぁ……っ!?」  ……この笑顔が、何かとツイてない俺の心のオアシスだった。  そう……オアシスだったんだ。
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