7.好きな人の好きな人

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「俺は常田(ときた)悠介(ゆうすけ)といいます。会社では、SE、システムエンジニアをしてるんだ」  前もって用意していたであろう、名刺を瑠李に差し出した。啓斗に見せたものと全く同じ名刺だった。 「お~。大手ですね!」 「そうだね、一応」 「常田さんはSEでどんなお仕事をされてるんですか」 「カーナビとかカーステレオ関係かな。主にカーナビの中身、ソフトを作ってるよ。海外モデル担当だけど」    瑠李はパアッと目を輝かせた。  対照的に隣に並ぶ啓斗は憮然とした表情だったので、悠介は吹き出しそうになるが、何とかぐっとこらえる。 「海外モデルですか。すごい!」 「いやいや、逆にわかりやすいんだよ」 「そうなんですか?」  瑠李は目をパチクリさせ瞬きを繰り返す。 「うん。俺はヨーロッパ周辺のモデルを作ってるんだけど、日本は多種多様な機能を好むって感じしない?」 「はい。そうですねぇ、確かに」 「ヨーロッパではシンプルで扱いやすいものが好まれるから、こちらとしても作りやすいんだよね。余計な機能は必要ない。それよりも使いやすさ重視、シンプルイズベスト」  悠介がふんわり微笑むと、啓斗は面白くない顔でカフェオレを啜る。大人より大きな体型で、わざとらしい音を立てながらカフェオレを啜るなんてかわいすぎる。 「なるほど、その国々で違うというわけですね」 「そういうことだね」 「それでこんないいマンションに住めるんですねぇ、すごいなぁ」  瑠李は悪びれることなくすらすらと素直な感想を述べた。 「残念ながらこの年で独身。彼女もいなくてね、その代わり貯金だけはあるんだ。だからこのマンションも買ったってゆーわけ。啓斗がしばらく居候するくらい全く問題ないし、全然心配しなくていいよ」  悠介はコーヒーを啜りながら、瑠李を半ば説得する気持ちで説明する。 「結婚願望はないんですか?」 「あんまりね。瑠李さんはある?」 「あり……ますね。今すぐとかではないですけど、いつでもできるように準備はしておきたいです。貯金とか。焦ってるわけでは全然ないですけど」  やはり堅実なお姉さんタイプ。ゆるっとした啓斗との相性は抜群だろう。  貯金なら負けない、と無駄な対抗心を生むが、そもそも年齢が違うし、マンションを買ったのでたいした貯蓄も残っていないし、啓斗に与えられるものはマンションの一室にすぎないのかもしれない。  
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