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「そんな危険なスポーツでよかったら、プロの試合のチケットあるから帰りにでも渡すね。二人で見に行ってもいいんじゃない?」
悠介の表情筋は固まったまま口元だけを緩ませて、席を立ち上がる。妙に据わった目をしていた。
「じゃあ俺は部屋にいるから、あとは二人だけで話し合うといいよ。帰るとき教えて」
そう言い終えるが早いか、さっさと自分の部屋に向かう悠介。
どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。アイスホッケーが危険なスポーツなんていうことは、後々話せばいいことで、せっかく興味をもってくれた人に対してあれはないと思う。スポーツのおもしろさをしっかり伝えればよかった。日本ではマイナーなスポーツなのだから、ファンは一人でも多い方がいい。
だから啓斗の好きな人なんかに会いたくなかったんだ。今うなだれても後の祭りだ。
「ゆ……けさん、悠介さん!」
いきなり腕を掴まれ、全身がビクッと強ばる。
「な、何?」
「呼んでも返事ないから」
「そうだった?」
啓斗に掴まれた腕から力が抜け、代わりに熱量が生まれる。
「そうですよ」
「何?」
「部屋に戻らないで下さい。瑠李と悠介さん、二人に話があるんです」
そう言われて、一体何の話なのかわからず首を捻る。
「だからそれを今から言うんですって」
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