7.好きな人の好きな人

8/13
前へ
/80ページ
次へ
「そんな危険なスポーツでよかったら、プロの試合のチケットあるから帰りにでも渡すね。二人で見に行ってもいいんじゃない?」  悠介の表情筋は固まったまま口元だけを緩ませて、席を立ち上がる。妙に据わった目をしていた。 「じゃあ俺は部屋にいるから、あとは二人だけで話し合うといいよ。帰るとき教えて」  そう言い終えるが早いか、さっさと自分の部屋に向かう悠介。  どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。アイスホッケーが危険なスポーツなんていうことは、後々話せばいいことで、せっかく興味をもってくれた人に対してあれはないと思う。スポーツのおもしろさをしっかり伝えればよかった。日本ではマイナーなスポーツなのだから、ファンは一人でも多い方がいい。  だから啓斗の好きな人なんかに会いたくなかったんだ。今うなだれても後の祭りだ。 「ゆ……けさん、悠介さん!」  いきなり腕を掴まれ、全身がビクッと強ばる。 「な、何?」 「呼んでも返事ないから」 「そうだった?」  啓斗に掴まれた腕から力が抜け、代わりに熱量が生まれる。 「そうですよ」 「何?」 「部屋に戻らないで下さい。瑠李と悠介さん、二人に話があるんです」  そう言われて、一体何の話なのかわからず首を捻る。 「だからそれを今から言うんですって」
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加