7.好きな人の好きな人

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「わかったよ、お前の気持ちは。でもさ、例えば二部のチームに受かったとして生活できるの?」 「一応プロですからね。一部とは雲泥の差ですけど」 「雲泥の差って……お前、そんな難しい言葉知ってたんだな」  驚いて話を脱線させてしまう悠介。 「……馬鹿にしてんすか」 「馬鹿にしてるよ」  二人は見つめ合って、いつもの調子に戻って笑う。 「今はどうだか知りませんけど、前に聞いた話だと二部の場合、チームで年棒の上限が決まってるんです」 「チームで?」 「はい。一部にはそんな制限ないらしいですけどね。だいたい一チーム、メンバー十二人か十三人で構成されます。登録上限は十五人くらいだった気がしますが、たいてい余裕を持たせて登録するんです。十二人なら十二人で、八千四百万を分割することになります」 「八千四百万?」  急に具体的な数字が出てきて首を傾げる悠介。 「オレが聞いたときはそれくらいでした。でも、強い主軸のメンバーを引き抜いてきたりしますよね。そういう人に年俸二千万与えるとします。じゃあ残り十一人で六千四百万を等分するかといえばそれもできない。レギュラーメンバーが納得しないですもんね。そうやって考えていくと、下にいけばいくほど年俸は下がって、新メンバーは二百万とか、三百万とかそんな感じじゃないっすかね」 「シビアだな、二部は」  悠介は困ったように笑うが、否定的なものではなかった。どちらかというと受け入れるような鷹揚(おうよう)な笑み。 「シビアですね。でも平気ですよ。オレ、今、年間で二百万も稼いでないですもん」  啓斗はにやっと笑った。心底楽しそうな笑顔だった。 「まあ……でもプロとなると、色々お金かかりそうだけどなあ」 「今だって毎日普通に練習できてんですからできますよ、お金なくても。お金があれば、上手くなるためにもっといい方法を活用したりはできるでしょうけど」  前向きな啓斗の発言に、悠介は安心して応援する気持ちになった。どうせ財産を残す意味もない。生きている内に誰かに与えられるなら、与えられるだけ与えたい。
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