69人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなわけで、これまで以上にバスケに本腰入れると思うんで、家にいないことも多いかもですけど心配はしないで下さい……ね」
悠介は照れたように笑う。誰かにはめられていた足枷が取り払われたような、吹っ切れた顔をしていた。
「……悠介さん、ありがとうございます」
ずっと黙って聞いていた瑠李が突然言葉を放つ。
「私には啓斗をそういう気持ちにはしてあげられませんでした。毎日バスケしてるけどどうしたいんだろうって思ってました。本気でしたいのか、今までずっとそうやって生きてきたから離れられないだけなのか、単なる執着なのか、それも全然わからなかった。何も考えていないのかとも思いました」
啓斗は何も言わず、瑠李の話に耳を傾けた。
「でも、うれしい。すごくうれしいです。啓斗が本気になってバスケしてくれるなんて……私も応援したい、応援します。悠介さん、本当にありがとうございます」
瑠李の大きな瞳には涙が溜まっており今にも溢れ出さんとしていた。
いいなあ、女の子は。涙を我慢しているだけでかわいくて男の気を引ける。特に啓斗みたいな単純な男ならイチコロだ。
ちらっと啓斗の様子をうかがうと、慈しむ目で瑠李を見つめていた。
ほうら、やっぱり。イヤな予感とともに悪寒がした。どうして啓斗の元カノにお礼を言われなきゃならないのか。本人に言われるならわかる。どうして瑠李に、よりにもよって元カノに、啓斗の代わりに感謝の気持ちを伝えられなければならないのか。
最初のコメントを投稿しよう!