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「マジか、おめでとう……啓斗おめでとう!お前もうプロだよ」
悠介はソファーに寝そべったまま満面の笑みを浮かべた。それは、心の底から湧き上がる笑顔だと啓斗にも見てわかるほど丸い微笑みだった。
同時に胸に熱いものがこみ上げ悠介の目尻にじんわりと涙が浮かぶ。目頭が熱い。それなのに思った以上に体がだるくて、悠介は未だに体を起こすことができないでいた。
「悠介さん、オレ、うれしいです」
「そりゃうれしいよ!俺だってうれしい……」
その瞬間、トンネルに入ったみたいに突然目の前が真っ暗になる。何が起きたのかわからなかったが、どうやら啓斗が覆い被さってきたようだと認識した。
「悠介さん、ありがとう。本当にありがとう……」
啓斗はしがみつくように悠介を抱きしめながら男泣きした。顔は見えないが嗚咽が聞こえた。
いつも飄々として見える啓斗だったが、不安だったのだと今になってわかる。もっと支えてあげればよかった。避けたり逃げたりしなければよかった。何て無駄な時間を過ごしたのだろう。もっと彼の支えになりたかった。それが今できる自分の最大だったのにと後悔する。
思えば啓斗に会ってからは後悔の連続だ。声をかけなければよかった。家に誘われなければよかった。試合に誘わなければよかった。啓斗の元カノに会わなければよかった……
悠介の首の左側辺りが生温かくくすぐったい。シャワーを浴びたのだろう、ほんのりとシャンプーの匂いが鼻を掠める。
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