9.出立

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「じゃあ何すか」 「普通に重い」 「重い?」 「重いよ!お前どんだけ筋肉つけたんだ」  啓斗がゆっくり体を起こして悠介から離れると、胸の辺りにぽっかりと穴が開いたみたいにすーっと冷たい空気が入り込んだ。 「めちゃめちゃ筋トレしましたからね」  目尻に涙をつけたまま満面の笑みを浮かべる啓斗。睫毛がキラッと眩しい。  悠介はソファーに横たわったまま尋ねる。 「一部?二部?」 「二部です」 「二部かあ……めでたいのに変わりはないけどな」 「もともと受かれば何でもよかったんで、贅沢言わないですよ」 「だな」  悠介は久しぶりに穏やかな気持ちでソファーに沈んだ。 「そうそう、すぐ引っ越さなきゃいけません」 「やっぱそうか」 「はい、岩手のチームなんですよ」 「……岩手?」 「はい、岩手」  目の前が真っ白になる。悠介の胸に空いた穴がいつの間にか肥大化し、もうすぐ悠介自身を呑み込めるほどの大きさになっていた。  
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