0人が本棚に入れています
本棚に追加
[俺]
わあーっ!もういい、もういい、わかったよ、わかったってば!降参だ!
探せばいいんだろ、探せば!
[ワイルド・キャット]
まったく常識が通じないんだから。こんな簡単なことがわかるまで、何時間かかってんのよ。
ホラ、これが失くした物のリストよ。手を抜かないで、きっちーりと探しなさいよ。
[俺]
いつリストなんか作ったんだ?早っ。手回しよすぎだろ。
[ワイルド・キャット]
なんか文句でも?
それなら言わせてもらうけど、あんたが邪魔しなければ・・・。
[俺]
ストップ、ストップ、待て待て、勘弁してくれ、もうよしてくれ。
俺、何にもいってないだろ。文句ないよ、文句なんか、もう全然、ない!
これだけのトラブルをまき散らしたあげく、張本人の台風は、次の日にはもう、アッサリと消え去った。
翌朝は、ホープ島としては奇跡的にさわやかな天気で、まあ、太陽は輝いちゃいないし、青い空も白い雲も見えちゃいないが、それでも、おだやかで気持ちのいい風が吹いていた。
出来もしない団地の修理にいそしんでいる大人達。ヘル・マーケット(ゴミ捨て場ともいう)に、食い物漁りに出ていく子供達。みんな、意味もなく忙しそうにしているが、俺は一人、その輪からはずれ、悲しみ団地の玄関前に座り込んでいる。
台風が来る前からボロボロ、来た後には半分崩れた外階段で、ワイルド・キャットのリストを前に頭を抱えてる。
リストは、グズグズになったシリアルの箱に、薄いエンピツ書きだったんだが、読みにくいのは、その為ばかりじゃない。
字が・・・汚すぎて読めねえ。
最初の字は、多分「エ」だよな。次の字が、どうしても読み取れない。地球上にこんな字はない。想像力を働かせて推測するしかない。
ワイルド・キャットに聞けば早いんだろうが、あいつは今、痛めたおみ足を休ませる為にお昼寝中だ。起こしに行くなんて、死地に赴くようなものだ。
エ・・・エ・・・エンジン?そんなバカな。エ・・・エントツ?なワケないだろ。エンドウ?エリンギ?エリマキトカゲ?
解読不能じゃねえか!
俺は、リストをあっちに曲げ、こっちに傾け、グルリと回して逆さにしてはまた戻し、自分の頭も右にひねり左にひねり、それでもやっぱり、全然わからん。
最初のコメントを投稿しよう!