ヘルズ・スクエアの子供達~パートⅢ~サイクロンのお話

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[俺] わあーっ!もういい、もういい、わかったよ、わかったってば!降参だ!  探せばいいんだろ、探せば! [ワイルド・キャット]  まったく常識が通じないんだから。こんな簡単なことがわかるまで、何時間かかってんのよ。  ホラ、これが失くした物のリストよ。手を抜かないで、きっちーりと探しなさいよ。 [俺]  いつリストなんか作ったんだ?早っ。手回しよすぎだろ。 [ワイルド・キャット]  なんか文句でも?  それなら言わせてもらうけど、あんたが邪魔しなければ・・・。 [俺]  ストップ、ストップ、待て待て、勘弁してくれ、もうよしてくれ。  俺、何にもいってないだろ。文句ないよ、文句なんか、もう全然、ない! これだけのトラブルをまき散らしたあげく、張本人の台風は、次の日にはもう、アッサリと消え去った。  翌朝は、ホープ島としては奇跡的にさわやかな天気で、まあ、太陽は輝いちゃいないし、青い空も白い雲も見えちゃいないが、それでも、おだやかで気持ちのいい風が吹いていた。  出来もしない団地の修理にいそしんでいる大人達。ヘル・マーケット(ゴミ捨て場ともいう)に、食い物漁りに出ていく子供達。みんな、意味もなく忙しそうにしているが、俺は一人、その輪からはずれ、悲しみ団地の玄関前に座り込んでいる。  台風が来る前からボロボロ、来た後には半分崩れた外階段で、ワイルド・キャットのリストを前に頭を抱えてる。  リストは、グズグズになったシリアルの箱に、薄いエンピツ書きだったんだが、読みにくいのは、その為ばかりじゃない。  字が・・・汚すぎて読めねえ。  最初の字は、多分「エ」だよな。次の字が、どうしても読み取れない。地球上にこんな字はない。想像力を働かせて推測するしかない。  ワイルド・キャットに聞けば早いんだろうが、あいつは今、痛めたおみ足を休ませる為にお昼寝中だ。起こしに行くなんて、死地に赴くようなものだ。  エ・・・エ・・・エンジン?そんなバカな。エ・・・エントツ?なワケないだろ。エンドウ?エリンギ?エリマキトカゲ?  解読不能じゃねえか!  俺は、リストをあっちに曲げ、こっちに傾け、グルリと回して逆さにしてはまた戻し、自分の頭も右にひねり左にひねり、それでもやっぱり、全然わからん。
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